木材について

● 木材について

世の中にはたくさんの種類の「木」があります。どの木もそれぞれすばらしい性質を持って育っています。その性質をどうやって活かしていくか?小さいときから木に囲まれて生活してきた「津山の職人」だからこそ語ることが出来る話を載せています。

  はじめに写真で見る津山で使っている木材をご紹介します。
職人は小さい頃から培った知識を基本にして、木と向き合いながら、
地域産材を利用してものづくりをしています。
そのものが何になりたがっているのか。木の声をじっくりと聞く。
そして表情は、デザインは、仕上がりは、、、
様々な問いかけをしながら作品づくりをしている。

一番多く使っているのが、杉材です。
日本の代表する木材。やわらかい素材で、あたたかみのあるやさしい木です。
柾目取り(左)と板目取り(右)で木目のもようが違います。
また芯に近いところは赤身が多いのが特徴です。

次によく使う木材はアカマツの木です。
こちらもとてもきれいな木目です。
年数が経つとアメ色になってきて自然のツヤがでます。

こちらは花器やうつわに使うけやき(欅の木)です。
和風のものをつくるときに使うことが多いです。けやき色という茶色い色が着いていますが
材料そのものは木肌色をしています。高級素材として仙台箪笥などに使用されますが
無着色で使える材料は大変稀少価値の高いものとなります。

その他に、イチョウ、ケンポナシ(津山では通称アサガラと呼ぶ)、えんじゅ、キハダ、
クワ、クリ、ホウノキ、ライシンボク、カヤ、サイカチ、ナラ、カキなど
下記に写真を載せています。
欅と違い素材そのものの色となっております。

こちらはヒノキの枝の皮をとって磨いて透明のウレタン塗装をしたものです。
ヒノキの皮が剥ける時期があり、年中つくれるものではありません。
自然木を利用したとても貴重な作品です。

こちらはアカシアの木です。
黄土色に見えますが、色や質感は生育条件や木材の部分によって違いがあります。

これは、樫の木です。
木材にもようが入っています。色も白とクリーム、こげ茶の混じった感じがします。

この赤い木はカリンです。
木の色が赤いので、おもちゃの動物の耳やアクセントに使用することが多い木です。

このようにいろいろな材質をつかったキーホルダーの製作もしています。
とても丁寧につくった作品です。

ここからはシリーズで木について
津山の職人に取材した内容を掲載しています。

 ●赤松(あかまつ)

アカマツ(赤松) は、日本では、昔から伝統芸の道具立てに使われています。また長寿をあらわす縁起の良い木、松竹梅としても親しまれています。
枝は、庭木や正月用松飾に使われます。

樹皮が赤褐色で新芽が赤っぽく幹がしなやかな曲線を描くマツ目マツ科マツ属ニ葉松類の常緑高木針葉樹です。
赤松林にはマツタケ(松茸)が生えます。北半球に分布するので、葉による熱の発散を防ぐため、葉は針のように細くなっています。葉は1ヶ所に2枚が束となり枝に付き、束成します。

数年経つと枝から離れて落下します。果実は球形をしており、マツボックリ(マツカサ)となります。
木工品や家具にしたとき、はじめは白っぽく、少しクリーム色で木目も美しい木です。
杉よりも固い素材なのでテーブルや机を製作したり、業務用のうつわの製作にむいています。
おしぼり置き 大根おろし
ロッキングチェア

 ● 萱(かや)

カヤの木は葉に独特の匂いがあります。
実は炒って食用としたり、油をとったりします。蚊遣りに用いられたことが転訛しこの名になったといわれております。

当方では職人が太い木でよく花瓶を製作しますが、何年かすると元は黄色い色のカヤの木の花瓶が少しずつ赤みをおびて真っ赤な色になるということが稀におこります。

その不思議な現象がなぜおこるのかについてはまだ解明できないのですが、その赤くなった花瓶を好んで買い求めるお客様もあります。茶托などの小物類の製作もしますが、黄色に色づいた茶托もとても上品で良いと思います。
おしぼり置き 木のお皿
花器

 ● 杉(すぎ)

杉の木 日本で一番身近な建築材の杉の木。 辺材は白っぽいが芯に向かっていくほど赤褐色になる。

木材・・・特に杉の木は加工後でも呼吸をしているので水分を出したり、吸い取ったりして正に加湿器や除湿機の役目を担ってくれます。木は日本の風土や気候に合った性質や特徴を持ち、産地や自然の環境において成長しています。

私たち日本人の暮らしに最も合うのが杉の木ではないのだろうか、と思っています。

柔らかくて軽い、あたたかみのあるやさしい素材です。
香りも良く、さわやかな安らげるような香りです。
 

 ● 銀杏(いちょう)

銀杏 木の実はご存じぎんなん。
葉っぱはそう、あの扇形の葉っぱのいちょうです。広い葉っぱなのに、分類は針葉樹なんです。

用途は家具、和裁の裁板、まな板等。イチョウは加工するのにあたって、とにかく刃物の切れがいい。カンナをかけてもスルスルと削れる。私が扱っている木(20種位)中でも一番です。

まな板に向くのは「男木」、銀杏の実る「女木」は銀杏の臭いがするので好まれません。男木はまったくその臭いがしないのも不思議です。また、水切れがいいのもまな板に向く性質です。

ところで、プラスチックのまな板は水はけがよく扱いやすいですが、木のまな板でもプラスチックでも、どちらも包丁を使う事で筋ができ、削れた材は少しずつ食材の中に、微量ですが入ることになります。
まな板は使うにつれてへこみがでるため、包丁のあたりが悪くなり、ねぎ等切っても一つづりになったりします。衛生的な問題もありますが、木を口にするかプラスチックを口にするかなんて事も考えたりもします。

木材質が均一であたたかみのあるクリーム色なので玩具等に好んで使用しています。
 

 ● 埋れ木 (うもれぎ)

津山で使っているのは県内の岩出山で津山杉を埋れ木の状態にした茶色の木材です。

いわゆる埋れ木材=エステックウッドとは、宮城県工業技術センター(現:宮城県産業総合技術センター)が昭和55年から昭和58年まで実施した『木材から埋木状木材を製造する方法に関する研究』の成果を踏まえて世に出した製品です。

不活性雰囲気下で高温加圧処理(製造特許技術)した木材で、薬剤に頼ることが無く、寸法安定性の向上並びに耐久性の向上が期待でき、使用時及び廃棄時に環境に対する負荷が少ないクリーンな木材です。

つまり津山杉を高温の電子レンジと圧力釜のような機械の中に入れ、2週間ほど温度調節した中で蒸しているような状態を保つと…自然に中まで茶色になった埋れ木が完成するのです。

この自然の色合いは着色と違って、とても味わいのある感じなのです。そして杉の玩具に埋もれ木を入れることでワンポイントになったり、模様となってその自然のもつ木目が活かされるのです。
 

 ● 楢 (ナラ)

(及川光弘氏より)

どんぐりの実のなる木・ナラ。この木になるどんぐりは、細長い形をしている。 まん丸いどんぐりは、かぶと虫の好きな「クヌギの木」になる。どちらもカシの木の仲間だ。
童謡のどんぐりコロコロはくぬぎの木のどんぐりを唄っていると思う。ナラの木のどんぐりはコロコロうまく転がらない。

ナラの木の種類は2つある。水ナラと小ナラ。水ナラは葉っぱが大きく倍近くある。材の重さは同じナラかと思う程軽く、加工も比較的容易である。
そんな事から木工品では水ナラを使う事が多い。

津山の山にも両者のナラがあるが、小ナラが圧倒的に多い。小ナラはしいたけのほだ木や、その重さと火もちがいいので炭焼き用材として好まれる。

水ナラを7本購入した。末口直径1尺5寸~2尺4寸まで、長さは13尺であった。そのナラはどこまで製材しても割れていた。それも数箇所の年輪で・・・これでは木工には使えない。

一番太いナラ。一本丸ごと冬のストーブの薪になった。黒染んだ木口の色も手伝って、ストーブの薪は火持ちがいい。高価な薪は灰になった。灰は畑にまき野菜に変わる。
まごのて 
一文字盆

 ● 櫟 (イチイ)

(及川光弘氏より)

イチイ科イチイ属の植物。またはイチイ属の植物の総称。
常緑針葉樹。別名をアララギ。

材が建材・家具・細工物などに用いられる。津山ではおっこぬき、おんことも呼ぶ。しかし、一位の木 すごい名前だ。

話しによると仁徳天皇がこの木で笏(しゃく)を作らせ、その出来栄えをめでて正一位を授けたそうだ。名ばかりではなく、その材もなかなか木工好きをうならせる。

カンナがけはするすると削れ、程よい硬さがあり、水質にも強い。針葉樹のわりには木目がはっきりしていて、その仕上げた表面はなんとも品があり美しい。
生育しにくい木なのか木目が細かく、木材変形も少ない。よく庭木で見られるイチイ。実は秋に赤く熟し、多肉質で甘く薬用にもされる。
まごのて 木のボタン

 ● 爛心木 (ランシンボク)

(及川光弘氏より)

ライデンボク、ランシンボク、津山ではみんなこの木をそう呼んでいます。 材色は赤色、サーモンピンクに近い。経年変化であずき色になります。

板にすると木目のはっきりした環孔材。気乾比重は0.5以下。 広葉樹では、比較的軽い。学名は爛心木(ランシンボク)。別名カイノキ、トネリバハゼノキと呼び、学問の木といわれています。

数も少なく市ではほとんど見かけない希少な木です。

※もくもくハウスでは、靴べら、箸、はし置き、おしぼり置き、こいのぼりの一部にこの木を使用しています。その希少な色合いと木目をご覧ください。
うずまきコースター
銘々皿

 ● 柿 (かき)

(及川光弘氏より)

柿の木はカビがつきやすい、虫が好んで食う、乾燥しにくい。製材すると反ったり、割れたりする。

木工品完成までの歩留まりは最悪である。
しかし、これがまたおもしろい表情を見せてくれる。

木の色は白から灰色、緑がかったもの、黒いぽつぽつゴマの様なものが一面に入っているもの、木目にぐちゃぐちゃした染みの様な柄が入っているもの、白と黒のコントラストがみごとないわゆる黒柿もある。しかも黒柿はなかなかない。

希少木で歩留まりが悪いやっかいな柿の木。
でも、作る。おもしろいから・・・(コクタンはカキノキ科)
 

 ● 欅 (けやき)

(及川光弘氏より)

建築材や木工品の材料として古くからよく使われるケヤキの木。津山でもあっちこっちでよく見かける、馴染みの深い木だ。仙台のケヤキ並木は見る人をほっとさせる。

しばらく前にケヤキの小径木の板があるので、カスタネットを作る事にした。カスタネットは小さいので曲がりやねじれの板でも無駄なく作れる。

原木(丸太)は一度の購入したわけではないので産地はばらばら。どこから来た木なのか記憶にない板も多い。
さて、ものづくりは木取りから始まって、丸いカスタネットの原形の四角い板を作る。

ある長さの幅決めした板から、丸ノコを使ってぽつぽつ四角い板を切っていく。しかし、どうだろう。この作業がなかなか終わらない。数を間違えて木取りしたらしい。

「えっ!これ全部カスタネット!」
・・・
できた数は1000個分。2000枚も作ってしまった。
あー、もう二度と作らなくてもすむかも。これをきれいに数個の箱に入れた。

箱の中は白っぽいケヤキから始まって、あずき色のケヤキまで、まるで秋の野山の紅葉の様。
その変化にとんだ色あいと材質(硬さや刃切れ)によってケヤキほど異なる木はないと思う。
やわらかくて、するする削れる木。硬くてどう削ってもさか目(ささくれ)が止まらない木。

さて、お客さんはどんな色のカスタネットを好んでくれるか。
なるべくたくさんの色のケヤキを店に並べている。
 けやきの器

 ● 槐 (えんじゅ)

堅い素材で古くから魔よけとして床柱、茶筒などに使われた木です。縁起をかつぐ木としても親しまれています。
(薬用としても活用されています)マメ科に属する木。木質は非常に硬く、生育が遅い。 春に黄白色の美しい花を咲かせる。 当店ではよく茶筒やマグカップ、小槌、ふくろうの置物などを製作しています。年輪は明瞭で美しく所々の木肌が黒光りをしている事が特徴。樹皮は淡黒褐色で辺心材の差が明瞭。辺材は狭く黄白色、心材は暗褐色を呈し、 老樹になると濃暗褐色になる。材はやや重硬で、強くねばりがある。心材は腐れや割れが入りにくい。 (木材図鑑より抜粋)
えんじゅの商品
えんじゅの商品